中亜探検 (中公文庫)



中亜探検 (中公文庫)

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明治の男児はすごかった!

 本書は、若干18歳で「西域」(今ではシルクロード、中央アジアなど
と呼ぶことが多い)を探検した一仏教徒の物語である。
 20世紀初頭の中国内陸地帯(新疆)は、英国やロシアなどの列強の思
惑が複雑に絡み合う政治のグレートゲームの表舞台となっていたので
が、同時にこの地域は、イギリスのスタインやスウェーデンのヘディン
などの著名な探検家が足を踏み入れたことで、考古学上の遺物争奪戦の
激しい応酬が繰り広げられる探検上の激戦地ともなったのである。そし
て、そこに登場するのが、日本の西本願寺の大谷光瑞伯が組織した大谷
探検隊である。大谷探検隊は、計3回の西域探検を敢行するが、それら
探検の中心となったのが、本書の主人公「橘瑞超師」であり、若干18歳
の青年だったことで、長く語り継がれる一因となった。ただし、大谷探
検隊は、西欧列強とは、決定的に異なる点があった。それは、彼らが、
仏教徒であって、国の利害(大谷探検隊と軍部との関係など疑問な点は
多いと指摘する人もいるが)や個人のあからさまな功名心が彼らを突き
動かしたのではないう点であり、彼らが私淑した玄奘三蔵の軌跡と共通
して興味深い。ともあれ、明治の日本にあって、とても稀有な試みであ
り、現在に至るまでも絶後の壮大な企ての最も華やかな部分、何より、
若年とはいえ、冷徹な判断力や決断力を兼ね備えた人間であるからこそ
成しえた正に探検の内実について共有できることを素直に喜びたい。
 本書解説には、金子民雄氏による本書と橘瑞超師をめぐる西域探検の
概要が添えられ、理解を助けてくれる。特に、巻末の年表は、未定稿と
しながらも、大谷探検隊理解に有意義なものといえよう。
 ただし、現在、本書は絶版である。



中央公論社




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